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「税理士による相続人にやさしい相続税のページ」は、税理士 永野智一氏と提携して運営しております。 本ページの記載内容に関するご質問や相続税のご相談は、下記にて直接お問い合わせください。(相談料は無料です)
相続税の計算の流れ
(1) 遺産総額の計算(各相続財産の評価)
相続税の全体像を把握していただくのが目的ですので、シンプルな計算例にしています。
(具体例) (単位:万円) 路線価・時価 相続税評価額
①(+)本来の財産 自宅用の土地 1億円 2000万円 (*1)
居住用の建物 2000万円 1000万円 (*2)
現預金、株式など 6200万円 6200万円 (*3)
小 計 1億8200万円 9200万円
②(+)みなし財産 生命保険金他(非課税枠控除後) 6000万円
③(-)非課税財産 (便宜上なし)
④(+)相続時精算課税制度に係る贈与財産 (便宜上なし)
⑤(-)債務・葬式費用 (便宜上なし)
⑥(+)相続開始前3年間の生前贈与財産 (便宜上なし)
合 計(=課税価格の合計額) 1億5200万円(A)
(*1)
居住用の小規模宅地の減額(80%)適用後の金額、相続税の申告書を提出することが適用要件となります。申告書を提出しない場合には、未申告となり、課税価格は1億円で計算されますので、多額の相続税を納めることになります。また、減額は最高が80%であり条件によって少なくなります。
(*2) 固定資産税評価額
(*3) 株式の場合は一定の評価方法がありますがここでは考慮しておりません。
(2) 課税遺産総額の計算
(具体例)
遺産総額から、基礎控除額を控除して、課税価格を計算します。
家族構成 甲:被相続人(75歳)、乙:配偶者(70歳)
子供AおよびB(共に20歳以上)
基礎控除額の計算は、次のとおりです。
3000万円+600万円×法定相続人の数(3人)= 4800万円
課税遺産総額 = 1億5200万円(A) - 4800万円 = 1億400万円(B)
(3) 相続税の総額の計算
(具体例)
課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定して、税額を計算します。
(法定相続分による取得額) (仮の相続税額)
乙 (1/2取得) 5200万円 5200万円×30%- 700万円 = 860万円
A (1/4取得) 2600万円 2600万円×15%- 50万円 = 340万円
B (1/4取得) 2600万円 2600万円×15%- 50万円 = 340万円
課税遺産総額(B) = 1億400万円 相続税の総額(C) = 1540万円
(実効税率~ご参考)
課税遺産総額に対する税率(C÷B)% 1540万円÷1億400万円 ≒ 14.8%
遺産総額に対する税率 (C÷A)% 1540万円÷1億5200万円 ≒ 10.1%
相続税の速算表(税金の額=A×B-C)
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(4) 各相続人の相続税の計算
(具体例)
各相続人の実際の取得財産(=課税価格の合計額)を次のとおり取得したと仮定して、
総額を按分計算します。
乙 (自宅用の土地建物と現金他) 合計で 7000万円 (割合 46.0%)
A (現金の一部と生命保険金) 合計で 5000万円 (割合 32.9%)
B (現金の一部と生命保険金) 合計で 3200万円 (割合 21.1%)
各相続人の課税価格の合計額 = 1億5200万円(A)
相続税の総額1,540万円を、上記の割合で按分計算します。
(各相続人の相続税額)
乙 1,540万円 × 46.0% ≒ 708万円
A 1,540万円 × 32.9% ≒ 507万円
B 1,540万円 × 21.1% ≒ 325万円
合 計 1,540万円
ここで、配偶者である乙には、税額の軽減措置により次のとおり取り扱われ、乙の相続税額はゼロ(=納付しない)になります。
配偶者乙については、たとえ相続税額がゼロであっても、この税額軽減措置の適用を受けるためには、申告書を提出することが必須の要件になっています。
(配偶者に対する相続税額の軽減措置)
① 配偶者の法定相続分7600万円(A)と1億6000万円(B)のいずれか低い金額7600万円
② 配偶者の課税価格 7000万円(C)
上記の①と②の低い方の金額に相当する部分について、税額軽減されます。
具体的には、①の低い金額7600万円と、配偶者の課税価格②の7000万円のいずれか低い方で、課税価格7000万円相当額部分の相続税が税額軽減されます。
(配偶者に対する相続税額の軽減にかかる留意事項)
法定相続人が3人で相続税の課税遺産総額が3億円前後であれば、配偶者以外の相続人には課税されますが、配偶者にはほとんど税金がかかりません。ここで、申し上げたいことは、預貯金やタンス預金があり、しかも、相続財産として申告していない場合です。この申告洩れの財産が税務調査で発見されますと、たとえ、配偶者が取得した財産であっても、配偶者に対する相続税額軽減の規定は不適用となります。また、これらの隠ぺいした預貯金等は税務調査で、殆どのケースで発見されますので、隠し通すことは至難の業です。正直ベースの申告をお勧めする次第です。
(5) 相続税の申告書の提出と納付
以上の計算手続きを終えたのち、相続人全員が相続税の申告書に記名・押印し、主として次の書類を添付して、被相続人の納税地の税務署長宛てに提出します。
(主な添付書類)
① 被相続人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)および相続人の戸籍謄本(相続開始の日から10日を経過した日以降に作成されたもの)
なお、被相続人の戸籍謄本は、出生から死亡時までのすべてが必要になります。被相続人のご存命中に最近までの戸籍謄本を準備されるようお勧めします。
② 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
(注)遺産分割協議書には、自署および実印の押印が必要です。
③ 相続人全員の印鑑証明書
④ 土地や家屋の固定資産税評価証明書等
⑤ 土地等の評価証明書
(土地等の所在略図、地形図なども添付)
⑥ 預貯金等の残高証明書(相続開始日現在のもの)
⑦ 被相続人の略歴書など
上記のほか、財産の種類に応じてそれぞれ残高明細書や評価計算書、相続人に未成年者がいる場合には特別代理人選任に関する書類、生命保険金などの支払通知書など多くの書類の準備が必要になります。また、これらの書類がないと、いくら専門家であっても、正しい相続税の申告書を作成できなくなり、事後の税務調査で否認されるなどのケースが出てくることになります。
このホームページをお読みいただき、将来の被相続人の方が、相続人が遺産相続で心労やトラブルを抱え込まないようお考えいただければ幸いです。生前におけるしっかりした準備こそが円満な相続をお約束いたします。そして、円満な相続こそが、故人となられた方の尊厳を高めることにつながると考えております。蛇足ながら、円満な相続をお考えになって、公正証書による遺言書を作成されることが、財産を子孫に残していかれる方の責務と考えます。