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税理士による相続人にやさしい相続税のページ (平成26年以前)
3. 相続手続きの基本的な流れ
(1) 被相続人の死亡
民法882条は、相続開始の原因として、『相続は、死亡によって開始する』と規定しています。
(2) 死亡届の提出(7日以内)
死亡届は、通常は同居の親族などが、死亡の事実を知ってから7日以内に、死亡診断書や火葬許可申請書を添えて、届出人の住所地の市区町村役所戸籍課に提出します。この届出書は、日曜祝日・夜間も受付しており、葬儀社の代行でもよいことになっています。
(3) 遺言書の存在の確認
被相続人の死亡の後、忘れてはならないことが遺言書の存在の確認です。
遺言書が発見された場合は、まず、遺言書が公正証書遺言か自筆証書遺言かを確認します。
公正証書遺言の場合には、直ちに有効であることが確認できますが、自筆証書遺言の場合には、未開封の状態で、家庭裁判所に提出して検認を受ける必要があります。
家庭裁判所の検認手続きは、本遺言書が被相続人の遺言書であるか否かなどを判定する保全の手続きですが、その遺言が有効か否かを決定するものでありません。
自筆証書による遺言書は、その記載内容によっては、無効になることもありますので、自筆証書遺言書を作成する場合でも専門家に相談されることをお勧めします。
また、後日、財産を分割した後で遺言書が発見された場合には、その変更手続きがたいへん面倒になりますので、慎重に遺言書の有無を確認してください。
(4) 遺産総額の確定(各相続財産の評価)
遺産総額は次の項目の加減算によって計算します。
① (+)本来の財産
→ 土地や建物、現預金、株式社債など
② (+)みなし財産
→ 生命保険金や退職金など
③ (-)非課税財産
→ 墓所や霊廟、祭具など
④ (+)相続時精算課税制度に係る贈与財産
⑤ (-)債務・葬式費用
→ 銀行などの借入金や葬儀費用など
⑥ (+)相続開始前3年間の生前贈与財産
合 計(=遺産総額)
(5) 遺産を相続するか否かの確認
(相続の放棄または限定承認‥3ヶ月以内)
相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に相続の放棄か限定承認の手続きをしなければ、単純相続したものとみなされます。通常は、借入金などの債務が多く、遺産総額がマイナスになる場合に、相続の放棄または限定承認の手続きを行います。
相続の放棄は、相続放棄申述書に戸籍謄本を添付して家庭裁判所に提出します。
限定承認は、相続財産の範囲内でのみ債務の承継を行うことをいい、相続人全員で家事審判申立書に戸籍謄本や財産目録を添えて家庭裁判所に提出します。
なお、相続の放棄は相続人単独で行うことができますが、限定承認は相続人全員で行う必要があります。債務超過の恐れがある場合には、特に手続きを忘れないようにしてください。被相続人が連帯保証人である場合など、相続後3ヶ月以内に判明しない債務があると考えられる場合などには、特に限定承認は有効な手立てになります。
(6) 所得税の準確定申告
(被相続人の所得税の確定申告‥4ヶ月以内)
被相続人の死亡の年の1月1日から死亡の日までの間に所得があり、確定申告の義務がある場合には、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続人が連名して準確定申告を行う必要があります。この準確定申告は、被相続人に不動産所得がある場合や事業を行っていた場合には、かなり手間のかかる手続きになります。
(7) 遺産分割協議書の作成
各相続人が取得する財産を明確にするため、遺産分割協議書を作成します。この協議書は、様式は自由ですが、各相続人が自署し、実印で押印することが必要です。また、財産を取得しなかった相続人がいる場合でも、自署・押印することになっています。
実務的には、遺言書により財産分割が明確でない場合には、遺産分割協議に多くの時間を費やすることになります。くれぐれも“争続”が起きないように確実な遺言書を作成しておいてください。
(8) 納税方法の確認と資金手当て
各相続人が取得する財産を明確にするため、遺産分割協議書を作成します。協議書は、相続税が発生する場合には、現金納付か物納かなどの納税方法と資金手当てを考慮して作成する必要があります。相続財産が多額の方は、遺言書の作成はもちろんこと、各相続人の取得する遺産内容を明確にしてあげることが、無用の混乱を防ぐことになります。
(9) 相続税の申告と納付(10ヶ月以内)
通常は、49日法要の終了後に遺産分割の話し合いを行うケースが一般的です。この段階で相続財産が多額になると見込まれる相続人は、税理士等の専門家に相談されるケースがでてきます。この時期は、相続開始後約2ヶ月近くを過ぎていますので、残り1ヶ月間で相続財産を調査し、遺産総額がプラスかマイナスか概要を把握し、万が一マイナスの場合には、限定承認か相続放棄かを選択しなければなりません。
特に、銀行などからの借入金が多くあり、債務超過の恐れがある場合に、そのまま放置しておくと、後々禍根を残すことになります。単純承認をした場合には、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続人が引き受けることになるためです。
また、その1ヶ月後には、通常の確定申告より手間のかかる準確定申告の手続きがあります。被相続人が事業を行っていたり、不動産所得や譲渡所得などがある場合には、所得内容の確認に時間がかかり、時間に追われることになります。相続開始後の4ヶ月や10ヶ月という期限は、思いの外、時間が無いということを知っておいてください。