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税理士による相続人にやさしい相続税のページ (平成26年以前)
6. 相続税の節税対策のご紹介
(1) 生前贈与の活用
贈与税は相続税に比べて税負担の割合が大きくなりますが、毎年110万円の基礎控除が認められていますので、長い目で見ると有効な節税対策につながるといえます。例えば、毎年、基礎控除内の110万円以内で贈与していくと、20年経過後には2000万円以上が税負担なしで贈与できることになります。
ただし、この贈与についてはいくつかの注意点があります。税務上の判断基準に、連年贈与の考え方があり、同じ金額の贈与を定期的に数年続けると、計画的な贈与とみなされて、その合計額に対して贈与税が一括課税される可能性がありますので、注意が必要です。
この連年贈与を避けるためには、①毎年の贈与する時期を変える、②贈与する金額を変える、③贈与のつど、贈与契約を結ぶ、④銀行預金などにする場合には、通帳と印鑑の管理を受贈者が行うなど工夫することが必要です。要は、計画的な贈与でないことを証明する根拠を残しておくことが肝要です。
(2) 生命保険の活用
現時点では、生命保険金の非課税枠は、500万円×法定相続人の数です。
新しい税制が施行されますと、この非課税枠が大幅に縮小されて、500万円×生計を一にする法定相続人に限定される予定です。今回の事例では、子供が2人とも家を出ていますと、これまで1500万円であった非課税枠が500万円に縮小することになります。
なお、未成年者と障害者には生命保険金について特別の取り扱いがあります。また、生命保険金はみなし相続財産と呼ばれており、遺産分割協議の対象から除外されるので、特定の人に確実に現金を残すことができます。
(3) 不動産の活用
ここでは、不動産を活用した節税対策をご紹介します。この方法は、確実に相続税を大きく減額することができますが、実施する場合には、特に資金繰りに余裕を持ち、また、賃貸アパートの場合にはその入居率などを十分に検討のうえ、不動産を持ち続けるリスクを承知したうえで、専門家に相談して進めるようにしてください。
すなわち、土地を評価する場合の路線価は実勢価格の80%程度で評価され、建物の相続時の評価は固定資産税評価額によりますので、大幅な評価減になります。また、賃貸アパートが建てられた土地は貸家建付地となり、借主の借家権相当部分が評価減されることになります。
そのうえ、建築資金を借入金などで賄いますと、大幅に評価額を減額できますが、実際に相続が開始した場合には、不動産の分割の問題や相続税を支払うために資産を売却しなければならなくなると、デメリットになることがあります。
この賃貸アパートなどの節税対策を検討する場合には、相続人の納税資金まで考慮したうえでないとお勧めできません。
区 分 |
現在の財産 |
一部借入金で 建築(*3) |
全額借入金で建築(*3) |
現 金 |
7000万円 |
2000万円 |
7000万円 |
土 地 |
1億5000万円 |
1億2300万円(*1) |
1億2300万円(*1) |
賃貸アパート (建築費1億円) |
な し |
4200万円(*2) |
4200万円(*2) |
借 入 金 |
なし |
△5000万円 |
△1億円 |
合 計 |
2億2000万円 |
1億3500万円 |
1億3500万円 |
(*1) 借地権割合60%、借家権割合30%として計算すると、
1億5000万円×(1-0.6×0.3)
(*2) 固定資産税評価額を建築費の60%、借家権割合30%とすると、
1億円×0.6×(1-0.3)
(*3) 建築資金が一部借入金であっても、全額借入金であっても相続税評価額は大幅に減少(≒40%減少)しますが、いずれにしても相続後の借入金の返済と納税資金の確保が課題になることが予想される。
(4) 小規模宅地等の特例の活用
被相続人と同居していた配偶者やその子供が宅地を相続した場合には、240㎡部分までは評価額を最大で80%減額することができますので、特に都心にお住まいを保有される方には、この特例により相続税が大幅に減額されることになります。
この特例は、配偶者が自宅の土地・建物を相続する場合には無条件で適用されますが、同居の子供が相続する場合には相続税の申告期限まで継続して居住することが要件とされています。また、この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書の提出が必須要件とされているなど一定の要件があります。なお、これ以外にもこの特例が認められるケースがありますので、被相続人に配偶者も同居の親族もいない場合などは専門家に相談してみてください。
(5) 墓地や墓石などの生前購入
墓所や霊廟(れいびょう;先祖の霊を祭った宮)や祭具などは相続税の非課税財産とされています。お墓用地をお持ちでない方や墓石・仏壇がない場合には、被相続人の生存中に現金で取得しておいてください。相続財産を取得してから購入しても節税にはなりませんので、注意が必要です。
(6) 贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の配偶者から、居住用財産の贈与または居住用財産を取得するための資金の贈与があった場合には、基礎控除額110万円のほかに2000万円を限度として特別控除が認められています。この規定の適用を受けるためには、申告書の提出が要件とされています。また、本配偶者控除の適用を受けた者は、贈与者が3年以内に死亡した場合でも、2000万円を限度として相続税の課税価格への加算対象から除かれます。
(7) その他の取り扱い
上記以外にも、贈与税については次のような取り扱いがありますが、本旨からやや外れますので、項目と概要のみを記載しておきます。
① 相続時精算課税制度
受贈者の選択により、現行の贈与制度の代わりに、相続時に一体として課税される方法があります。この規定の適用を受けるためには、贈与税の申告書に相続時精算課税選択届出書を添付することが必要です。
② 住宅取得資金等贈与の非課税の特例
平成21年の緊急経済対策により施行されたもので、直系尊属から20歳以上の直系卑属が住宅取得等資金の贈与を受けた場合に、一定の要件の範囲内で非課税とされるものです。
この規定の適用を受けるためには、贈与税の申告書にこの規定の適用を受ける旨を記載して、申告することになります。なお、本規定は緊急措置であることから非課税金額(基礎控除額)は、例年変更されていますのでご注意ください。